研究紹介 

 

持続的発展社会実現を目指した機能性セラミックス材料開発

 

概要

  世界的な生活水準の向上とともに資源の枯渇や環境汚染の問題が深刻化しており、「豊富で毒性の低い物質に基づく機能材料開発」は持続的発展社会実現のための鍵である。筆者は、 「希少元素に頼らない機能材料開発」をテーマに、主に光学・電子機能性無機材料に関する研究を展開している。結晶構造や結晶中の欠陥という観点で機能発現のメカニズムを解明し、高機能化実現に向けた材料設計を狙いとしている。

 

研究キーワード

応用 レアアースフリー3d遷移金属蛍光体・紫外線センサー・ガスセンサー・固体電解質・キャパシタ

物質 バナジン酸塩化合物・アルミニウムリチウムフッ化酸化物(ALFO)・酸化亜鉛・表面修飾酸化スズ・チタン酸バリウム・ヨウ化銀-酸化銀系超イオン伝導体

合成法 固相反応プロセス・液相プロセス・スパッタ法・真空蒸着・化学気相析出法・ゾルゲル法

評価 X線回折・電子顕微鏡-エネルギー分散X線分光・熱重量-示差熱分析・分光光学測定・電気特性評価

 

1. バナジン酸およびフルオロバナジン酸塩化合物に基づくフルカラー蛍光体の開発

 

 

  結晶中のバナジン酸クラスタ(VO4V2O7など)が発光タイプの蛍光体で、結晶構造・組成によって発光色が変化する。結晶構造中のVO4四面体クラスタにおけるV-O距離と発光エネルギーの相関を突き、VOF4型の多面体クラスタを含むフルオロバナジン酸塩を含め、『バナジウム』によるレアアースフリーのフルカラー蛍光体を実現した。


         

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2. 3d遷移金属イオンを発光中心に用いたLED用深赤色蛍光体

 


  既存の蛍光体の多くに、母体化合物の構成成分、あるいは発光中心として希土類元素(レアアース)が用いられている。新規蛍光体母体であるフッ素ドープアルミニウムリチウム(ALFO)に、Cr3+, Mn4+, Fe3+発光中心を加えることで、既存の蛍光体が苦手とするLED青光励起の深赤色蛍光の実現を目指している。

  ALFO中でこれらの3d遷移金属イオンが強い蛍光を示すなど、本化合物の蛍光体母体としてのポテンシャルが明らかにした。

 

    

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3. 酸化亜鉛を受光層に用いた高速応答紫外線センサーの開発

 

 

  紫外線はその波長によってUV-A, -B, -Cのように分類されており、生体に対する影響も異なる。最もエネルギーが大きく生体に対してダメージの大きいUV-Cはオゾンや酸素によって吸収されるため、自然由来のものは地表にはほとんど存在しない一方、殺菌灯などに利用されている。いわゆる日焼けの原因になるのが太陽光中のUV-Bで、過剰に浴びると皮膚がんのリスクが大きくなると言われている。一言で“UV”と言っても影響の度合いや利用法が異なり、その強度を個別にモニターすることが重要である。

  本研究室では「酸化亜鉛(ZnO)」という物質をベースとして高速応答性のUVセンサーを研究している。従来、応答性を向上させるために高品質酸化亜鉛層を作製すると、絶縁性が上がり測定が困難になる問題や受光層劣化のメカニズムを解明し、大気暴露状態でも年単位で安定な酸化亜鉛受光層を実現した。